旅ごころブログ〜公認心理士が書く心理学ブログ〜

公認心理士、臨床心理士をしている筆者が心理学の知識を伝えていくブログです。恋愛心理学、ストレス対処法など日常で使える心理学はもちろん、精神科の疾患についても解説します!

難病である摂食障害者の心理的特徴 なぜ命をかけて痩せを求めていくのか 治療法や治療タイミングも紹介

摂食障害とは、食行動の重篤な障害を呈する精神障害の一種です。

厚生労働省の難治性疾患にも指定されていることからわかる通り、非常に治療の難しい病気です。

 

近年では骨と皮だけのような状態の摂食障害患者様は減少しているとも言われていますが、それでも生命の危機を伴う危険な病気です。

 

摂食障害には①拒食症と②過食症があると言われていますが、どちらかだけが出現することはまれです。

 

たくさんの治療法や原因などが提唱されていますが、実際に根治するのは非常に困難です、摂食障害の本質をきちんと理解している専門家も少ないのが現実です。

 

異常なまでに痩せにこだわったり、常識では考えられないほどの食物を食べたり、食行動の以上に目が向きがちですが、心の中も強い虚無感を抱えている方が多く、本当に苦しい病気です。

 

今日は摂食障害の方の心理的特徴、治療法、治療のタイミングなどについて書いていきます。

 

 

 

摂食障害とはどのような病気なのか

摂食障害と聞いて「過剰なまでにダイエットをする」「たくさん食べて嘔吐をする」という病気だとみなさんは想像するかもしれません。

 

表面的にはその通りです。

 

その方によってパターンは異なりますが、

・食事や水分を極端に制限して痩せを保とうとする

・過剰に運動をして痩せを保とうとする

・以上なまでに食事をつめこみ、嘔吐する

などの行動は多くの摂食障害者に見られます。

 

身長にもよりますが体重が40キロを切るころには、多くの場合は強制力のある入院形態で入院をし、生命維持の処置が施されます。

女性の場合は当然月経も止まりますし、若くても髪の毛が抜けたり、歯がぼろぼろになったりします。

 

10代~20代の若い頃に発症することが多い、と言われていますが、思春期の頃に必ず発症している、という専門家もいます。

 

男女比は圧倒的に女性が多い病気となっています。

 

 

摂食障害者の心理的特徴 なぜそこまでして痩せを求めるのか

摂食障害者がなぜ生命の危機になってまで痩せを求めるのか、これにはたくさんの専門家がたくさんの考えを持っています。

 

・少女から女性になることへの不安感から

・母子の葛藤から

・痩せを推奨する社会的圧力から

・ストレスから

 

などが多く言われていることです。

 

ここでは、あくまで私自身が摂食障害を抱える方たちの治療に携わった経験から考える、心理的特徴を書いていきます。

 

・自己愛的な心性からくる行動の病

一番の特徴は、摂食障害は「行動の病」だということです。

 

傷つくこと、辛いことが起こった時に、自傷行為をしたり家を飛び出したりして辛い気持ちを解消することを、心理学では「行動化」と呼びます。

この行動化は人格障害の患者様がよく用いる方法ですが、摂食障害の方もこの方法を用いていると思います。

と言うのも、摂食障害者は自己愛的な人がとても多く、自己愛性人格障害の心性にとても似ているのです。

 

自己愛性人格障害は、他者への興味関心の低さ、他者を自分の利益のために利用したり、他者に心を開かなかったりする特徴があります。

摂食障害者も同様の特徴があり、自分の体重維持に協力してくれる人に対しては肯定的な感情を向けますが、それは自分の目的を邪魔しない、援助してくれる相手だからです。

 

摂食障害者は、他人の心や自分の心よりも、自分の体重に強い執着心があり、苦しいことを心の中にとどめておけずに、食行動の異常、という形で表現するのです。

 

これは想像を絶する苦しさです。

 

摂食障害の方は、いつもいつも不安で虚しくて満足できていないことになるからです。

 

人間は一人では生きていけず、他者との暖かい心理的に深い関係性に助けられます。

 

しかし摂食障害者はそこに救いを見いだせないのです。

 

摂食障害者が救いを見いだせるのはただ一つ。

「誰よりも痩せている自分」

です。

これがなくなると自分は何も価値のない人間になる、そのような恐怖を常に持って生きているのです。

 

・人間の欲を自分の強い意思のみで抑えようとする

摂食障害者は自分の強い意思で、人間の三大欲求を抑えようとします。

食欲だけではないのです。

 

最初の頃は、食事を制限することでどんどん痩せていきます。

それは摂食障害者からするととても気分の良いことで、このころは活動的で機嫌が良いことがほとんどです。

食欲にのまれずにダイエットができている自分が快感で仕方がありません。

 

しかし、体重が減っていくとだんだんと食事を制限することが難しくなってきます。

 

それは当然です。

身体が痩せていくと、生き延びるために強い食欲がわくからです。

その強烈な食欲を意思の力だけで制限するのは、至難の業です。

これ以上食べなければ死ぬ、という状況になっても食べない、命がけで食欲を制限しているのです。

 

体重が極端に減ると当然性欲はわかなくなります。

身体の力がなくなっていくので、寝てばかりになりますが、時にはこの睡眠欲も極端に制限する場合もあります。

何時間睡眠、と厳密に自分でルールを決めていたりすることがあるのです。

 

私たちが当然のようにみんな持っている欲を、自分の意思の力でねじ伏せて、それが成功すると自分の価値を見いだせる、成功できなければひどく取り乱し混乱する、それが摂食障害の方の実態です。

 

実際、だんだんと食事を制限することに限界がくるようになり、強烈な食欲によって過食の時期が必ずきます。

リミッターがはずれたように食べて食べて食べまくりますが、それもそのはず、今まで極端にカロリーを制限していたのですから、身体が食事を欲していのは当たり前なのです。

この当たり前のことに、摂食障害の方は強く狼狽し嘆き悲しむのです。

 

 

ここまでのことをまとめると

・食べたものを胃の中にとどめて消化をすることができない=心の苦しみも心の中で消化することができず、嘔吐することで苦しみも吐き出している

 

・他者との暖かい関係よりも、痩せた自分の身体に安心感を覚え、その痩せを維持するために命をかけている

 

・誰よりも痩せている自分、というイメージが崩壊することを恐れている

 

・生命維持に必要な欲を意思の力で抑えつけようとし、それができなくなるとひどく狼狽する

 

題名の答え「なぜそこまでして痩せを求めるのか」の答えがこれだと私は感じています。

 

 

摂食障害者の治療のタイミング、治療法

治療は早い段階で繋がればそれが一番良いと思いますが、大事な時期は患者様が過食になった時だと思っています。

患者様が食事を制限することに限界がきて過食になった時、必ず心が揺れます。

その時に治療者に助けを求めてくることが多いと思いますので、そのタイミングは絶対に逃してはいけないと思います。

 

治療法はたくさん提唱されていますが、私はA-Tスプリットの体制が絶対に不可欠だと思っています。

 

A-Tスプリットとは、管理医と治療実践者が分離し、お互いがお互いの仕事をしながら協力・連携していく、という治療体制です。

 

摂食障害は正しい食事の習慣をつけたり、最初に決めた食事のルール、体重管理のルールを順守してもらう必要があります。

普通の食事を普通に食べて、普通の体重になることは治療上絶対に不可欠です。

そのような健康管理・患者様ご家族への心理教育・家族相談・多職種への指示などを多担当する管理医がいて、治療実践者(多くの場合、臨床心理士精神科医)が患者様の心理的な治療を行う、という形です。

 

これが実践できるのは多くの場合、精神科での入院治療になると思います。

 

入院中は食事の管理であったり、精神的に不安定になった場合の支えは、多くの場合看護師が担います。

非常に大変な役割となるので、ここでも必ず連携が必要です。

 

ご家族の支えももちろん大切です。

ご家族が摂食障害に理解を示し、患者様の心の揺れに一緒に付き合いつつ、耐えていく、という過程は必ず通ると思います。

 

患者様もご家族も、治療者も本当に大変な思いをしますが、時間をかければ摂食障害の方が変化をしていく可能性はあります。

 

 

摂食障害者の完治とは?

摂食障害者が治る、というのはどのようなことを指すのでしょうか。

吐かなくなる、少し痩せてはいるけど、以前ほどではない、仕事をするようになった、性格が柔らかくなった、このような状態でしょうか?

もちろんそれも一つの指標だと思います。

しかし私は絶対に外せないポイントがあると思っています。

それは、

苦しみを苦しみとして感じることができること

です。

 

前述したように、摂食障害者は苦しい思いを感じたり心で消化することができません。

だからこそ食物と一緒に身体の外に出してしまうのです。

摂食障害者が一見冷たく見えるのはそのためです。

冷たいのではなく普通の人が悲しむような出来事に耐えられないから、外に出してしまっているだけなのです。

 

だからこそ、「ああ私今悲しい」「苦しい」と感じつつ、それを外に出さずに心で抱えることができる、普通の人がやるのと同じように適切に対処ができる、このことが大切なんです。

 

これができないままだと、いくら身体が健康になっても心は虚しいままです。

そしてその虚しさは一生涯続いていくのです。

 

おわりに

摂食障害は難病です。

しかしできるだけ早く専門機関に繋がり治療体制を作れれば、幸せを感じて生きていくこともできます。

 

治療先は精神科ですが、摂食障害の治療経験がある医師のもとでの治療が望ましいと思います。

 

摂食障害の方が適切な治療に繋がり、誰でも持っていて当然の自分の弱さも認めながら、幸せになることを心から祈っています。

爪を噛む、皮膚をむしる、口の中を噛む、ニキビやかさぶたを剥ぐ、その癖もしかしたら皮膚むしり症かも!?治療方法や概要を紹介

指の皮膚をむしったり爪をはいだりする、指を爪でカリカリする、口の中で頬っぺたを噛んだりする、などの行動が止められない方は多いです。

これは「皮膚むしり症」と呼ばれる症状です。

 

子どもさんに見られることが多いですが、大人でも人には知られないようにしながら皮膚むしりをしていることはあります。

 

車の運転中にハンドルに指をこすりつける、かさぶたや皮を剥ぐ、など出現の仕方は様々です。

 

皮膚むしり症は精神科で治療をすることができますが、それはなかなか知られていません。

 

今日は皮膚むしり症について解説していきたいと思います。

 

今日の記事は

・自分自身が皮膚むしり的な行動を取ってしまう人

・子どもの皮膚むしりが気になる親御さん

・皮膚むしりについて勉強したい人

にお勧めの記事です。

 

 

皮膚むしり症とはどのような病気なのか

皮膚むしり症は「強迫性障害スペクトラム」の一つだとされています。

 

強迫性障害とは、頭の中に嫌なイメージが浮かびそれにとらわれてしまう病気です。

嫌なイメージにとらわれてしまうと、そのイメージを何とかして打ち消そうと行動を取りますが、その行動も止められなくなってしまいます。

結果日常生活に大きな支障が出る非常に治療が難しい病気です。

 

例えば、鍵をかけたかが気になり確認を何度も何度も繰り返す、身体の汚れが気になり4時間以上お風呂に入り続ける、などですね。

 

皮膚むしりはこの強迫性障害と関連のある疾患で、女性に圧倒的に多く、思春期の頃にニキビをつぶすことから始まった、という方もおられます。

吹き出物をつぶしたり、同じ個所を何度もむしったりし、そこの部分が固くなってしまったり傷が残ってしまうことも多々あります。

 

この皮膚むしり症は2013年に正式に診断基準に入ったもので、実は精神科の中でもマイナーな存在です。

 

「苦しい何とかしたい!」と受診をされる方も少ないですし、何年も長く続くことが多いので、ご本人からすると当たり前になってしまい、治療するものだ、という認識もわきにくいのです。

 

強迫性障害のグループには不安障害も入っているので、不安が強い傾向がある方も皮膚むしりをする傾向はありますが、この皮膚むしり症は過剰なストレスがある場合や忙しい環境では発症しにくいと言われています。

それよりも、暇で何もやることがない時などに皮膚むしりが出てしまいます。

何度もむしっているので見た目にも黒ずんでいたりと何らかの変化が見られます。

「やめたい。もうやめよう」と思っていてもなかなか我慢ができない、皮膚をむしる衝動をコントロールできないのです。

 

 

皮膚むしり症だと思ったら 受診を決めるポイントは

どの疾患でも同様ですが、受診をするかどうか決めるにはポイントがあります。

統合失調症のように明らかな精神病症状が出ていたり、依存症のように生活や身体に大きな影響を与えるような病気であれば、早急に受診が望ましいですが、皮膚むしり症の場合は必ずしも早急な治療をするのが良いとは限りません。

 

・本人が皮膚むしりの症状に苦しんでいる。

・親や周囲の人間が、本人の皮膚むしり症を何とかしたいと思っている

・指や肌を見せる仕事をしており、皮膚の病変が起こると困る

・皮膚むしりをすることで日常生活に支障が出ている

 

などがポイントになります。

 

皮膚むしり症の症状には個人差があるので、「嫌だな、しんどんな、治したいな」と思うようであれば精神科に受診をしてみて下さい。

 

また、精神科医や心理士にはどうしても得意な分野と苦手な分野(と言うよりよく知らない)があります。

皮膚むしり症を治療するのであれば、強迫性障害の治療経験があるか、皮膚むしり症についての知識を持っているか、行動療法の知識があるか、などを電話で確認後に受診をすることをお勧めします。

 

 

皮膚むしり症の治療

①ハビット・リバーサル法

ハビット・リバーサル法とは、皮膚をむしりたくなった時にあらかじめ決めておいた別の行動を行う、というものです。

例えば、

・皮膚をむしりたくなったら飴をなめる

・爪を噛みたくなったら爪をゆっくりと撫でてみる

・ニキビをつぶしたくなったら深呼吸をする

などです。

 

皮膚むしり症は、先ほども説明したように「皮膚をむしりたい」という衝動を抑えきれないわけですから、この習慣的な衝動をやり過ごすことができれば、行動化が防げるということです。

ハビット・リバーサル法はそのような強迫性の障害に有効な治療法です。

 

また、それを行なうとすれば「セルフモニタリング」ができるようになることも役に立ちます。

自分で自分の状態を客観視できるようになることです。

 

「今皮膚をむしりたい」

「口の中を噛みたくてむずむずしている」

「ニキビをつぶすことを考えている」

などを把握できるようになれば、その時にそれら以外の行動を取るようにできるわけです。

 

このようなことを一人で計画を立てて実行し、効果を検証していくのはなかなか難しいので、ハビット・リバーサル法を使用したことがある心理士と一緒に行うことを推奨します。

 

 

おわりに

精神疾患というのは本当に幅広く、自分では普通と思っていることでも、実は診断名がある、というのも珍しくありません。

自分がその症状に悩まされているか、日常生活で支障があるのか、社会的に認められない行為なのか、などが受診のポイントとなることは少なくありません。

 

もしも皮膚むしり症で困っている方、苦しんでいる方、やめたいと思っている方がおられたら、ぜひ精神科に受診をしてみて下さいね。

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精神科で用いる抗精神病薬の効果と処方薬依存について、精神科勤務筆者が解説します

精神科では抗精神病薬という種類の薬を使用することがあります。

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寒い時期は身体だけではなく心の調子も崩しやすくなります。

セルフケアを心がけて元気に2月に入っていきましょうね!

引き続き「旅ごころブログ」よろしくお願いします。

東出昌大さんもゲス不倫!なぜ不倫はなくならないのか?不倫をする心のメカニズムを解説します

東出昌大さんの不倫が大きな話題になっていますね。

杏さんとの結婚生活5年間のうち、3年間は不倫をしていた、とのことで非難殺到しているようです。

 

不倫は決して芸能界だけのものではなく、一般人である私たちの身近にも普通に起こり得ることです。

ドラマの世界だけではなく、この普通の日常の中にありふれているものなのかもしれません。

 

今日は「なぜ不倫はなくならないのか」「不倫をしないさせないための方法は?」について考えていきます。

 

 

世の中は不倫であふれている なぜ不倫はなくならないのか

大きな会社に勤めていると、時々不倫のうわさが聞こえてきたり、自分や友人の配偶者が不倫をしたり、大人になると不倫はこんなに身近にもあるのか!と驚かされた、という方もおられるかもしれません。

 

私も相談業務をする中で、たくさんの不倫の相談を受けてきました。

不倫をされて傷ついている、不倫をしてしまって後悔している・・・など内容は様々です。

入籍をしたその時は互いに永遠の愛を誓ったはずなのに、どうして不倫に走る人がいるのでしょうか。

 

配偶者が結婚をして変わってしまった、結婚生活のストレスのはけ口が不倫だった、「理由」となるものはそれぞれ違うと思いますが、心理的には「刺激」を求めているというのは一つ言えると思います。

 

人間は毎日のルーティンに落ち着きを感じますし、変化を嫌う傾向はありますが、新しい恋愛の刺激は強烈に良いものとして体験します。

 

恋愛関係から夫婦になり、深い愛情を育んでも、短絡的には新しい恋愛の鮮明な刺激が威力的に見える場面がある、ということです。

 

先にその「刺激に反応する」ということで恋心がわき、「運命の人だった」「切ない恋だけど自分を理解してくれるのは不倫相手だけ」「配偶者に問題があった」などと、後から理由をつけている、というのは言えそうです。

 

多くの場合、不倫をするのは自分の心に問題があります。

刺激を求めていたのか、自分の満足のために異性からの称賛が必要だったのか、それは人それぞれですが、自分の心の葛藤が解決しない限り、不倫をして恋愛初期の刺激が冷めると同じ事を繰り返してしまうのではないでしょうか。

 

 

不倫を防止するためにできること 自分の心の問題を知ること

「日常を大切にする」「夫婦二人の時間を作る」「身なりに気を使う」など工夫できることはたくさんあると思います。

 

しかし、不倫は「夫婦関係の問題」であると同時に「個人の問題」も含んでいるからややこしいのです。

 

夫婦関係が破たんしていたり、お互いが満足なコミュニケーションを取れていなかったりした場合も不倫が起こる可能性はありますが、その人個人の問題で起こる不倫もあります。

まさに「誰と結婚しても同じことを繰り返す」ということです。

 

例えば、自分に自信がない男性がすごく可愛い女性にアプローチをされたらどうでしょうか、その時にたまたま奥さんが忙しくて「構ってもらえていない」とその男性が感じていたら?そこで不倫が始まったら、夫婦関係の問題なのでしょうか?

そうではなく、その男性が自分に自信がないうちはどんなに家庭が上手くいっていてもどこかしらに逃げ場を作ってしまうと思います。

 

とは言え、夫婦なので「それはあなたの問題だ」と切り離すのも何だか悲しいですよね。

 

だからこそ「良いところも悪いところも」知っていく必要があります。

 

不倫相手は「いつまでも別れてくれない」という相手の弱い部分を嫌というほど見てはいますが、それでも不倫相手の一部しか知りません。

 

しかし夫婦も意外とお互いのことを知らないもの。

 

人間は内的な弱さを誰でも抱えており、それを異性に抱えて欲しい傾向があります。

お互いの弱いところを理解していくことと同時に、自分の心の問題を把握しておくことは、夫婦関係を維持していく上では本当に大切のように感じます。

 

自分は(相手は)どんな時に寂しさを感じるのか

自分は(相手は)どんな人生を送りたいのか

自分は(相手は)どんなコンプレックスがあるのか

自分は(相手は)何に感動して何が好きなのか

 

一度自問自答し、また相手に質問をしてみても良いかもしれません。

 

 

不倫が始まるのは簡単なこと 

恋の始まりは人から思慮深さを奪います。

 

不倫関係を作るのは簡単なことなのです。

 

それは決して運命でもなければ、あなただけに訪れた悲劇の恋でもありません。

映画やドラマなどでは非常に切なく、ドラマチックに演出されていますが、恋愛の始まりなんてみなドキドキワクワクしますし、不倫という背徳的な行為には独特の強い感情が生まれるものです。断言しますが不倫の状況だと誰でも切なく苦しく「運命の恋だ!」なんてことを思います。

 

本当に難しいのは、関係を維持することです。

 

結婚生活なんてほとんどが日常の雑事にまみれためんどくさいもの。

そんな中に幸せを感じたりする力が「関係を維持する力」です。

 

ここを磨かなければ安定した幸せはなかなか手に入りません。

 

私は心理士なので、基本的にはその人が自分で考えて選択した道を生きていくものだという考えですが、不倫をするのであれば、これらのことを理解した上で選択しなければいけないと思っています。

 

このドキドキワクワクは自分だけにおこるわけではない。

全国に数多くいる不倫カップルみんなが感じていることなんだ。

不倫をしても自分は特別な人間になれるわけではない、ということです。

 

 

おわりに

結婚式や恋の始まり、不倫という非日常。

それらは人間の心を躍らす強い刺激になり、道を踏み外す原因にもなるかもしれません。

 

その刺激は人生において大切な刺激の場合もあります。

そして同時に安定も大切にしていきたいものです。

 

たくさんのご夫婦が、お互いを知り、弱い部分も抱えていけることを願っています。

ダブルバインドから考えるモラハラ・パワハラの対応方法!自分がモラハラ・パワハラをしない方法も紹介!

モラルハラスメントパワーハラスメントが強く問題視されるようになってきました。

夫婦、親子、上司部下・・・今まで当たり前だと思っていた関係性も、改めて考えていく必要があるのかもしれません。

 

そこでコミュニケーションを考える時に、「ダブルバインド」について知っておくことは役に立ちます。

 

今日はダブルバインドについて紹介し、モラハラパワハラへの対応方法、そして自分がモラハラパワハラをしてしまっていないかをチェックしていきます。

 

 

ダブルバインドとは?

日本語訳では「二重拘束」という意味です。

例を挙げると以下のようなコミュニケーションです。

 

不登校の子どもに母親が「今日は学校に行く?行かない?あなたが決めても良いのよ?」と聞いて、子どもが行かないことを選択すると、非常に不機嫌になったり説教をしたり涙を流したりする

(→「あなたが決めても良い」と言いつつ、行かないと母親がネガティブなコミュニケーションを取ってくる)

 

・何でも逐一報告して指示を仰げ、と上司は言うが、指示を仰ぎに行くと「自分で考えることもできないのか」と嫌みを言われる

 

・飲み会に行く許可を妻にもらおうとしたら、「行っても良い」とは言うものの、飲み会の日は非常に不機嫌になる

 

・夫が妻に謝罪をするように言い妻が謝罪をすると「自分の意思もないのか!」と怒る

 

このように、2つの矛盾するメッセージを同時に送ることをダブルバインドと言います。

 

不登校の子どもの例だと「学校を休みたい」という自分の気持ちを通そうとすると母親が不機嫌になり、子どもにとってはストレスがかかります。

学校に行く、という選択をすれば母親の機嫌は良くなるでしょうが、そもそも自分は学校には行きたくないのでストレスがかかります。

 

 これでは子どもはどちらも選択しても辛い思いをするわけです。

 

それでも「選択」を迫られているので選択をしないといけませんが、母親が不機嫌になっても学校を休む、という選択をするのはとても勇気がいることです。

 

結局学校に行くことを選択することになりますが、自分が「選択」をしたのでその責任も負わねばならないのです。

 

読んでいただいたらお分かりだと思いますが、ダブルバインドは受ける側は非常にストレスのかかるコミュニケーションの方法です。

 

 

モラハラパワハラダブルバインド的なコミュニケーション

モラハラパワハラはまさにダブルバインド的なコミュニケーション方法です。

 

例えば、妻にモラルハラスメントをしている夫が「お前のせいだ」「お前がだめだからこうなる」と言い続けたとします。

そのような環境にいると、妻の自尊心はどんどん下がり、夫に対する恐怖心が芽生えます。

 

そんな時に夫が妻に「どうしてこうなったか自分で考えてみろ」と言ったとします。

妻は「私がだめな妻なのでこうなりました」と答えます。

 

これは妻が自発的に思ったことというよりは、夫が妻に思わせた、言わせたセリフではありますが、夫は「お前が自分で考えて出した答えだ、認めたんだ」とさらに妻を追いつめます。

 

妻の方も、夫に言わされたことには気づかず「自分でも私はだめな人間だと思う」とどんどん深みにはまるのです。

 

このように、あたかも自分で選択をしたかのように見えますが、実際はストレスの高いほうを「選ばされてしまう」というのもダブルバインドの怖いところです。

 

 

モラハラパワハラ的なコミュニケーションの対応方法

まず第一に「関わらないこと」ですが、そうもいかないと思います。

モラハラがひどい配偶者とは距離を置く、などは当然すべきだと思いますが、まだやり直せる関係性であったり、仕事上の関係性である場合は、何とか対応していくしかありません。

 

①選択肢をこちらからも提示する

不登校の例で考えてみましょう。

「学校に行く?行かない?あなたが決めても良いのよ?」

と言われた時、母親は当然のように選択肢が2つかのように話していますが、実際は選択肢はもっとありますよね。

 

「午後からなら行けそうだからそうする」

「少し考えたいから時間をちょうだい」

「先生に電話で相談して決めたい」

「保健室になら行けそう」

「今日は休んでお母さんと一緒にいたい」

 

などなど、選択肢はたくさんあります。

 

提示されたものだけで決める必要はないので、意見を出してみるのも一つの手です。

 

②相談をしてみる

上司に「毎回指示を聞け」「少しは自分の頭で考えろ」と矛盾した叱責を受けている、など「どうしたら良いんだ!!!」となりますよね。

 

このような場合は「相談してみる」のはおススメです。

 

「考えてみたのですが相談をしても良いですか」

「分からない部分があって相談したいのですが」

 

とこちらから持ち掛けていく方法ですね。

 

上司からの矛盾した叱責は「自分の考えに合わせろ」という強制でもあるので、こちらの考えを伝えつつも上司に助けてもらえる関係性を作るための作戦です。

 

 

あなたはモラハラパワハラになっていない?チェックしてみよう!

モラハラパワハラは最近特に問題視されてきていることです。

自分がそのような関わりになっていないか気になる、なっていたら訂正したい、という方は以下のポイントをチェックしてみて下さい。

 

・クローズドクエッションになっていないか?

不登校の例で説明すると、「学校に行く?行かない?」はクローズドな質問です。

これでは相手に選択を迫る言い方になってしまいます。

クローズドクエッションになっている場合は要注意!

オープンな質問を心がけてみましょう。

例えば不登校の例だと、「どんな感じ?」と朝に声をかければ「今日もしんどくて行けないよ」「今日は気分が良いよ」など、子どもは自由に返答ができます。

 

 

・自分ばかりが話していないか?

明らかに自分が話す方が多い場合、相手は言いたいことが言えない緊張感を感じているのかもしれません。

相手の返答を待ったり、「どう思う?」と気持ちを聞いてみると良いかもしれません。

 

 

・自分の中で答えが決まっていないか?

不登校の例で言うと、母親は「学校は行くべきだ」という自分の中の考えがあり、子どももそう思うべきだと考えています。

そうではなく、母親には母親の、子どもには子どもの考えがあるはずです。

自分の考えを主張するのは良いのですが、それであれば「お母さんは学校に行けたほうが良いと思っているんだけどあなたはどう思う?」とはっきり伝える方がまだ良いです。

暗黙の了解で相手に察してもらい都合の良い返答を引き出すのは、とてもストレスを与えるコミュニケーションとなります。

 

 

・早口になっていないか?

早口でたたみかけるような言い方だと、相手は怯えてしまいます。

あなたのほうが年上であったり立場が上ならなおさらです。

ゆっくりと話すことを意識してみて下さい。

 

 

・大きな声になっていないか?

楽しい時の大きな声なら良いのですが、叱責する時は良くないですね。

大声で怒鳴ることに効果はなく、相手を委縮させてしまうだけです。

「叱る」というのは、何が悪かったのかを説明し考えさせることです。

「指導」というのは、相手の成長を促進させるためのものです。

怒鳴ることではどちらも得られませんし、あなたを「怖い人」にしてしまいます。

 

 

これらをチェックして行動を変化させていけば、無意識のうちにしているハラスメントはある程度防止できると思います。

 

コミュニケーションは誰でも癖があり、一度身に付いたものはなかなか消すことはできません。

まずは自分がダブルバインド的なコミュニケーションを取っていないか、意識してみて下さい。

結婚をしたのに好きな人ができた、忘れられない人がいる、そんな時どうしたら良い?行動化しないための対処法を紹介

カウンセリングセンターでカウンセラーをしていたころ、「(自分は既婚者なのに)好きな人ができてしまった。どうしよう」という悩みを多くの方から聞いたことがあります。

配偶者を裏切るつもりはないし、配偶者のことも好きなのだけど、違う人のことが気になる、あるいは忘れられない、という悩みです。

行動化しないのであれば深刻でもないような気もするのですが、このような内容は家族や友人には相談できないので、お金を払ってでもカウンセラーに相談を、ということなのでしょうか。

 

今日は「結婚しているのに好きな人ができた」「結婚しているのに忘れられない人がいる」人が、それを何とかしたい時におすすめの記事です。

 

 

結婚しているのに好きな人ができた、忘れられない人がいる場合のパターン

相談者の方の多くは以下の2つを望んでいました。

 

①この気持ちを消したい

②ばれないように不倫をしたい

 

①の場合は、自分は十分に幸せなのだから、今の生活を壊すつもりは一切ない。だけど好きな人のことを思うと胸が苦しいし、その人が誰か他の人と付き合ったり結婚したりしたら耐えられない。自分のこの思いさえ消えてしまえば幸せなのに・・・という考えですね。

 

②の場合は、今の生活が壊れてしまうのは困るけど、好きな人との関係を勧めていきたい。何とかうまくできないだろうか、この気持ちに共感して欲しい、という場合です。

 

 

既婚者なのに好きな人ができた!対処法はないの?

さて、結婚していても好きな人ができた、と相談に来られる時のパターンを紹介しましたが、これをどうしていけば良いのか、が重要ですよね。

 

まず明らかにするのは「何を目的とするのか」です。

 

・好きな人のことを忘れたい

・好きな人と正式に付き合いたいから今の配偶者と別れたい

・周囲にばれないように好きな人と付き合いたい

 

同じ状況でも人それぞれ目的は異なると思います。

 

 今回は「結婚しているけど好きな人ができた。この気持ちをどうにかしたい、忘れたい」というのが目的、という前提で書きます。

 

最初に大切なのは「気持ちを忘れることはできない」ということを認識することです。

好きな気持ちがなくなり興味がなくなる、など気持ちの変化はあり得ますが、意図的にできるものでもありませんし、「忘れる」のように綺麗さっぱり記憶からなくす、というのはもっと不可能です。

 

しかし「行動化しない」ということであれば可能です。

好きな気持ちを行動化せずにただひたすら耐えることができれば、時間の経過とともに気持ちは薄れていきます。

好きな気持ちを秘めておくのは苦しいと思いますが、あなたの目的が「家庭は壊さない」「好きな人への気持ちを忘れたい」ということであれば行動化をしないようにするのは最善の道です。

 

ここで紹介するのはそのための対処法です。

 

接触時間を減らす

心理学では単純接触の心理と呼ばれる法則があります。

ただ顔を合わせる機会が多い、というだけで好意的な感情を持たれやすい、というものです。

逆に言えば、接触する時間を減らすことができれば、好きな気持ちをセーブしやすいということです。

ちなみに、接触と言っても実際に顔を合わせるだけではありません。

相手のSNSは見れないようにすべきですし、相手の興味のある音楽は聞かない、好きな映画は見ない、など相手を連想するものとも一時期距離を置いたほうが効果的です。

 

②正当化していることに気づく

「相手も含めたグループで仲が良いから飲み会で一緒になるのは仕方がない」「仕事で必要な連絡だからラインをするだけ」などと行動を正当化してしまう場合は、それに気づいていくことが大切です。

家庭を壊すくらいなら飲み会には一時期は参加しない、仕事で本当に必要なら職場の内線や社内メールを使えば良いことなどは自分がよく分かっていると思います。

 

でも、人間は弱い生き物です。

恋心は強烈に心を揺さぶるので、正当化をしてなんとか相手と会おうとしたりしてしまうものです。

 

「正当化して言い訳しているけど、ただ一緒の時間を過ごしたくてしているだけだな・・・」

と気づいていければ良いですね。

 

③ルールを設ける

正当化していることに気づければ、次はルールを設けてみて下さい。

・仕事の用事は内線で

・相手のSNSは見ない

・相手のことを考えてしまった時には運動して忘れる

・配偶者への気持ちを復活させるために月に一度はデートをする

など、これなら守れそう、というルールを設けて実行する。

自分で決めたことを実行することで、凝り固まった感情は流れていくものです。

 

④相手からの好意を受けないようにする

自分が相手を避けることはできても、相手からもしも行動を起こしてきたら?

不倫でも良い、と言い寄られたら断るのはかなり難しくなりますよね。

そもそも、相手には絶対に自分の気持ちを伝えるべきではありませんし、ばれてもいけないと思います。

過去に告白をしたことがあっても、今は家族が大切、幸せ、という姿を見せるべきです。

相手があなたに興味を持たないようにすることで、結局はあなた自分を助けることになります。

 

 

ヒロインになれる恋愛は心が燃えるもの そんな時には知的理解を

良し悪しは置いておいて、結婚しているけど忘れられない人がいる、出会う順番が遅かっただけで運命の人だ・・・

なんてのは当事者としては心が燃えるものです。

せつなくて苦しくて、周囲の現実的な意見がとても冷たくつまらないものに聞こえると思います。

世界中にたくさんの人がいるのに、その瞬間だけは自分がヒロインになったように感じるのでしょう。

 

そのような感情は、心理カウンセラーとしては否定はしません。

人間は感情的な出来事に強く心を動かされますし、その記憶は強烈でなかなか消えませんし、安心や安定よりも刺激的にうつるものだからです。

 

もちろん自分の人生なのでどの道を選ぶのかは自分で選択をしていくものだとも思います。

 

しかし、配偶者以外に気持ちがあるけど、何とか行動化を止めたい、今の幸せを大切にしたい、というのであれば「知的理解」というのはとても効果的です。

 

今の自分の状況を客観視して、現実的な対応を検討し行うことです。

 

それはとても無機質でつまらなくうつるかもしれませんが、まずは半年間それをしてみて下さい。

意外にもあなたの恋心よりも現実的な生活のほうが大切だったことに気づくものです。

 

 

おわりに

一人の人を愛し続けるのはとても難しいことです。

それでも結婚をすれば子どもの有無に関係なく家族になります。

そこには恋心だけではない強いきずなも生まれるでしょう。

 

忘れたい恋がある人はついつい考えこんでしまいますが、思いにふけるよりも現実的な行動を取る、を心がけて自分の気持ちを整理してみて下さいね。

精神科で用いる抗精神病薬の効果と処方薬依存について、精神科勤務筆者が解説します

抗精神病薬は主に精神科医療で用いられる薬のことを指します。

精神科領域では服薬治療が主な治療なのか、それとも補助的な治療なのか、は支援者により意見が分かれるところではありますが、服薬治療・生活支援・心理的支援などが相補的に組み合わされることで治療効果が高まる、というのは今では常識です。

 

抗精神病薬によって、精神科関連の疾患が軽症化され、治療できる病気となりました。

一方で、「処方薬依存」という新しい疾患も生み出しています。

処方薬に依存する患者様もおられれば、必要な薬を拒否する患者様もおられ、どのように薬を治療の中で用いていくのか、は精神科医療では大きな課題です。

 

今日は抗精神病薬と処方薬依存について説明をしていきます。

 

 

 

抗精神病薬とは

抗精神病薬は、統合失調症躁うつ病認知症、などの病気で見られる「幻覚妄想状態」などの病的体験や、精神の興奮などに対して、症状を緩和し、鎮静させる効果を持ちます。

 

大脳や脳幹、神経伝達物質であるドーパミンに作用し、陽性症状(幻覚妄想など)に有効であるとされてきました。

陽性症状とは、統合失調症などに見られる病的な症状のことで、見えないものが見えたり(幻視)、聞こえるはずのない声が聞こえたり(幻聴)、ありもしないことを現実だと確信したり(妄想)するものを指します。

 

もともとは、このような激しい陽性症状に使用されてきた抗精神病薬ですが、最近では陰性症状(感情が生き生きと動かなくなったり、意欲が低下したりする)にも有効であることが確認されています。

 

薬なので当然副作用はあり、口渇・眠気などの軽いものから、身体がむずむずしたり吐き気がしたりなどの、生活に大きな支障をきたす副作用もあります。

 

副作用に留意しながら症状を緩和できるように、医師が診察での問診をしたり、家族や介護者が生活の様子を観察したりして処方を調整していきます。

 

精神科領域における薬物治療

精神科領域の病気への治療は、かつては隔離をして隠蔽をする、患者様の人権を無視した治療とも呼べないものでした。

 

精神病を「狐憑き」として治療よりも祈祷をしたり、「精神病は治らない」とされていました。

 

それが1952年フランスでクロルプロマジンという物質が発見され、治療効果をあげたことで変化が見られます。

 

日本においては、1955年に小林司医師が都立松沢病院で使ったレセルピンが薬物治療の幕開けと言われています。

 

薬物治療が始まり、精神病の治療は大幅に変化し、治る、緩和できる病気となったのです。

 

精神病治療薬の種類

 

抗精神病薬:妄想・幻覚の除去

抗うつ薬抑うつ症状の改善

抗不安薬:不安感、緊張感の除去

睡眠薬:睡眠の誘発、持続

気分安定薬躁状態の改善

 

などがあります。

人により合う合わないは当然ありますので、症状やその方の話をよく聞いた上で医師により処方されます。

 

 

精神科治療薬と処方薬依存

精神科治療薬は長期に渡り服用をする必要のあるお薬がほとんどです。

必要な服薬を拒否する方も多いですが、最近では処方される薬に依存をする患者様も増えてきています。

 

薬物依存症は、処方薬依存、市販薬依存、覚醒剤大麻などの非合法薬物依存など、種類は様々です。

 

処方薬依存の場合は、患者様が自分で薬を調べてとても詳しく知識を持っていることも少なくないですが、薬に依存的になり、たくさんの薬を集めたがったり、悩みや葛藤などの心理的な問題も全て薬で解決したがったりします。

 

医者や薬剤師が中心となり、適切な量を正しく服用する重要性を教育的に伝えていくことが大切だと言われています。

 

心理士は心理療法の中で、薬以外の対処法を検討したり、薬物依存の知識を一緒に勉強したりして関わります。

 

 

おわりに

精神科治療で薬は切って切り離せないものです。

とても効果がある一方で、長期に渡って服薬する精神的な苦痛に対しても、支持的な支援を必要としています。

 

医者、薬剤師、看護師、心理療法士などが連携することと、患者様やご家族ともよく話し合うことが求められます。