旅ごころブログ〜公認心理士が書く心理学ブログ〜

公認心理士、臨床心理士をしている筆者が心理学の知識を伝えていくブログです。恋愛心理学、ストレス対処法など日常で使える心理学はもちろん、精神科の疾患についても解説します!

人混み、人前で緊張してしまう人のための心理学的な対処法を紹介

スポンサーリンク

人混みが怖い、外に出ると心臓がドキドキする、など外出することへの不安を抱えている方がいます。

その方によって程度は異なりますが、人の視線や人混みへの不安が高まり、外出することが困難になってしまった場合は、医療機関への相談が必要になってきます。

 

しかし、何とか外出はできているけど外出するのが得意ではない、電車に乗っていると動悸がする、病院の待合いなど人が多い場所で緊張感が高まる、など「何とか日常生活は送れるけど苦しんでいる」という方はどうすれば良いのでしょうか。

 

今日は「人混みで緊張感が高くなる」人へ向けた対処法を伝える記事です。

 

 

 

人前で社会的な場で緊張感が高まる人とそうでない人の差は?

人が多い場所や社会的な場所では誰もが多少は緊張するものです。

肩に力が入ったり気をはったり、というのは多くの方が経験があるでしょう。

 

しかし、その緊張の程度には人それぞれ差があります。

非常に緊張が強く外出もままならなくなったり、人前を避けるようになる人もいれば、比較的平気な人もいるわけです。

 

この差はなぜ起こるのでしょうか。

 

まずは個人の特性の差です。

人前でも緊張が低い人もいれば苦手な人もいるのが当然で、これはその人が元々持っている素因ということですね。

 

その他にも人前で社会的な活動をすることが多い人は緊張が低くなるでしょうし(いわゆる慣れ)、普段人に会うことが少ない人は人前が苦手に感じるかもしれません。

 

このような環境や特性の差の他にも、人前や外出で緊張しやすくなってしまう原因はあります。

 

例えば、満員電車は誰でも苦手ですよね。

しかし多くの社会人は嫌だと思いながらも満員電車に毎日乗る生活をしています。

 

この時、たまたま満員電車に乗っている時に強い腹痛に見舞われたとすればどうでしょうか。

動くこともうずくまることも降りることもできない閉鎖空間で、自分のお腹の音がなっていることへの恥ずかしさと、お腹の痛さからくる焦りで汗も出てきます。

それが周囲にどうみられているのか気になってさらに恥ずかしくなり、汗はどんどん出るし、緊張は高まっていく・・・

 

もしもこのような体験をしたとすれば、今までは満員電車に乗る時の不安が3だった人でも、この体験の後には不安は8に上がっているかもしれません。

 

つまり、「またお腹が痛くなったらどうしよう」「今度は倒れたらどうしよう」という不安が出て来て、それにより満員電車への苦手意識が強くなり、緊張が高くなるのです。

 

心理学のメカニズムで説明すると以下の通りになります。

 

ある特定の場所で不快な出来事が起こる(満員電車で腹痛など)

不快な記憶は場所に対しても不快な感情を引き起こす(もう満員電車に乗りたくない!)

不快な感情が伴う場所を避ける(電車通勤をやめる)

その場所への苦手意識がさらに強まる(絶対に満員電車に乗りたくない)

苦手意識が広がる(空いている時間の電車にも乗れなくなる)

 

これがさらに広がっていくと「人が多い場所」「電車以外の公共交通機関」なども苦手になっていきます。

 

このように、何らかの不快な体験を人が多い場所でした、という人は人が多い場所で緊張が高くなったり、社会的な場所が苦手になったりすることがあります。

 

 

 人前で緊張してしまう人の対処法

緊張が強すぎて日常生活に大きな支障をきたしていたり、外に一歩も出られない、という場合は、専門家に直接相談が必要になってきます。

 

しかし、外には何とか出られているし仕事や学校など最低限すべきことはこなしているけど、人前や人が多い場所が苦手でしんどい、という方なら、以下の方法で少し楽になるかもしれません。

 

先ほど紹介したメカニズムにそって考えると、苦手な場所を避けると、その場所やその場所に類似している場所への不安感は高まります。

避ければ避けるほど、どんどん苦手になってくるわけです。

 

つまり苦手な場所を避けない、というのはまず第一に試すべき方法です。

 

電車が苦手でもそれを必要以上に避けずに、乗る必要がある場合は乗る、ということです。

 

これだけでも大きな効果があります。

 

そしてもう一つは「苦手な場所」という嫌な場所にいる時に「リラックス」することです。

 

これは心理学では拮抗条件付けと呼ばれていて、「嫌な場所」と相反するものである「リラックス」を同時に体験することで、嫌な場所への不快感が低くなる、というものです。

 

具体的には電車に乗り嫌な感情がわいてきてもそこを動かず、呼吸に意識を向ける。

この時に呼吸や動悸は早くなっていることが多いので、呼吸をゆっくりと整える。

深呼吸や腹式呼吸がおすすめ。

 

電車という嫌な場所を避けずにまずは身体からリラックスさせる、これを繰り返すことで、嫌な場所への不快感は少しだけ低くなります。

 

もちろん、苦手な場所を避けても問題なく生活できる場合は避けても構わないのですが、先ほど書いたように、苦手な場所は広がっていく可能性もあります。

 

どうしても嫌な場所は避けつつも、外出や人通りの多い場所、などは避けずに生活し、不快な感情がわいた時は呼吸を整えることに集中する、というのが現実的でしょうか。

 

 

おわりに

今回紹介した方法は多くの方に使える方法です。

 

嫌な場所、苦手な場面がない人はいないと思います。

そんな場面で「まずは身体からリラックスさせよう」という気持ちで呼吸を整えてみて下さい。

コツは吐く息を長くすることです。

最低でも1分、できれば5分、呼吸を整えることでリラックスできます。

身体と心は繋がっているので、身体がリラックスすることで心もリラックスできますよ。

 

ぜひ試してみて下さいね。