旅ごころブログ〜公認心理士が書く心理学ブログ〜

公認心理士、臨床心理士をしている筆者が心理学の知識を伝えていくブログです。恋愛心理学、ストレス対処法など日常で使える心理学はもちろん、精神科の疾患についても解説します!

8050問題って知っていますか?引きこもり100万人時代 引きこもりの増加・高齢化・長期化について説明します

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「引きこもり」が社会的な問題になるほど注目を浴びるようになってきました。

2019年、元農林水産事務次官が無職で引きこもりであった息子を殺害したことも、大きな話題となりました。

今日は引きこもりについての記事を書いていきます。

 

 

引きこもり100万人時代 引きこもりの増加・高齢化・長期化

引きこもり者の人数は100万人にも及ぶ、とはよく言われますが、引きこもりの問題は公になりにくいものなので、統計の数よりもいつも実際の数は多いと見ても良いと思います。

最近では、引きこもりの増加と同時に「高齢化」が問題視されています。

 

40歳~64歳の中高年層を対象に実施した調査では、ひきこもり状態にある人は全国で約61万人、一方2015年に実施した15歳~39歳を対象に実施した調査では、引きこもり状態にある人は全国で約54万人と内閣府は発表しました。

 

40歳~64歳:61万人引きこもり

15歳~39歳:54万人引きこもり

 

とてつもない数ですし(実際はもっと多いと思いますが)、確かに中高年の引きこもりが若年層の引きこもりの数をこえた、というのは驚くべきことです。

 

一昔前まで、引きこもりと言えば不登校の延長でそのまま外に出ることができずに、社会的な活動を行なえなくなる、つまり思春期の問題だとされていたと思います。

 

不登校の家族会や当事者の会などは、不登校から引きこもりに移行した人たちも参加していたように記憶しています。

 

私自身15年ほど前、新人のカウンセラーだった頃、思春期の不登校から始まり、長期の引きこもりに移行し、だんだんと歳を取っていく、これが中高年の引きこもり、というイメージを持っていたように思います。

 

しかし、現代は少し事情が異なってるようです。

一度社会に出て就職をしたけども、何らかの挫折体験をし退職、そのまま引きこもりに移行する、といった中高年の引きこもりが増加しているようなのです。

これはもう、「引きこもりは思春期の問題だ」なんて言ってられないわけですね。

 

これだけ数が増えて、高齢化している、というのはものすごい大問題だと思います。

 

と言うのも、中高年で引きこもった場合、親ももうすでに高齢であることが多く、高齢の親が中年の引きこもりの子どもの面倒を見る、というケースも多くなるからです。

いわゆる「8050問題」ですね。

 

そして高齢の親が亡くなった場合、中年の引きこもり状態にある子どもはどうやって生活をしていくのでしょうか?

貯金を切り崩していくのか、それがなければ一人で孤独に孤独死をしていくのか・・・

 

生活保護などの社会制度を利用するために、役所などに行き相談ができたり、手続きなどを行なえる人たちは、生活保護を受給するなどの選択肢がありますが、それもできない、その他に頼れる身寄りはいない、となると生きていく、ということも難しくなってきます。

 

また、引きこもり状態のある人すべてが生活保護を受給すると、確実に社会保障は崩壊します。

 

それだけ引きこもりの増加や高齢化、長期化は深刻な問題なのです。

 

 

引きこもり援助の実際

引きこもり問題が深刻なことは分かっても、じゃあどうしたら良いの?となりますよね。

 

まずは現状引きこもり援助はどのようなものがあるのかについて書いていきます。

 

引きこもり支援に関しては、数多くあります。

保健所での相談会、精神科での相談、引きこもり家族会、民間NPOが運営するフリースペース、生活訓練などなど‥

 

その中でも代表的なのは、ひきこもり地域支援センターではないかと思います。

 

ひきこもり地域支援センター

これは厚生労働省が運営する事業の一つです。

引きこもりに悩む人たちが、適切な支援は繋がることを目指して作られたセンターで、都道府県、指定都市に設置されています。

 

精神保健福祉士臨床心理士などの専門家が所属し、引きこもり支援の情報を提供します。

地域における引きこもり支援の拠点となる機関、ということですね。

 

そのため、現状ではまずはひきこもり地域支援センターに相談をする、というとがベーシックとなっています。

 

引きこもりの問題で難しいのは、当事者が相談に繋がりにくい、という部分です。

当事者の方は引きこもっているわけですから、自分で相談に行くのは非常に難しい、対人関係の引きこもりもあるので電話相談なども難しい、というわけです。

 

引きこもりの当事者が相談に繋がるのが難しい理由はもう一つあります。

「自分で何とかしたい」という気持ちが強いのです。

誰かに頼ることが怖い、申し訳ない、恥ずかしい、などの思いから、自分で何とかできる、という気持ちになるわけですが、もちろん自分で何とかするのは非常に難しいので、時間がどんどん過ぎていく、ということが起こります。

 

そのため、もちろん当事者の方が家族や支援者と一緒に社会復帰を目指していく必要があるのですが、これまで述べた理由から当事者の方が繋がるのはとても難しいのです。

 

だからこそ、最初は家族の方だけでも支援に繋がることが重要です。

 

引きこもり問題は隠ぺいされやすく、家族だけで問題を抱え込んでしまいます。

 

そうすると家族も引きこもり問題においては、世間から引きこもってしまうのです。

 

まずは引きこもり問題において、家族と社会の繋がりをしっかり取ることが第一歩となります。

 

 

おわりに

引きこもり問題は近年注目をされている問題です。

多くの方が引きこもり問題に関心を抱き、引きこもりに悩んでいる方が少しでも多く相談に繋がることを祈っています。